2022.6.23 抄読会
- 2022.06.24
- 勉強会
当科ではもちろん抄読会を定期的に行なっています。最新の論文から情報をup dateすることは医師としてとても大切ですよね。加えて統計学の勉強にもなります。
今回読んだ論文はCOVID-19についての論文です。
当科は日々COVID-19診療に従事しています。どうしても発熱→PCRとなってしまいがちですが、少しでも論文による知識の裏付けがあると診療に深みが出てくると思います。また、今後流行が落ち着いてきたらある程度患者を絞って対応する必要も出てくるかもしれません。その際に判断材料として「症状」はとても重要だと思います。しかし、現在猛威を振るっているオミクロン変異株の臨床症状についての論文はあまり多くありません。
今回の論文はオミクロン変異株の特徴をデルタ変異株と比較して明らかにしています。
<論文>
Menni, C. et al. Symptom prevalence, duration, and risk of hospital admission in individuals infected with SARS-CoV-2 during periods of omicron and delta variant dominance: a prospective observational study from the ZOE COVID Study. Lancet (London, England) 399, 1618–1624 (2022).
<研究の目的>
ZOE COVID Studyアプリから抽出した英国のCOVID19感染者(ワクチン2回または3回接種)において
オミクロン変異株患者は
デルタ変異株患者と比較して
症状,入院リスク,期間に違いはあるか
<方法>
- 英国で普及しているZOE COVID Studyアプリを使用した前向き縦断観察研究
- 対象は16〜99歳かつ新型コロナワクチン2回接種済みの人
- Primary outcome:
- 抗原orPCR陽性前後7日間の症状(アプリでモニターした32項目)を発症する可能性
- 抗原orPCR陽性前後7日間の古典的症状(発熱、臭覚消失、持続的咳)を発症する可能性
- 入院する可能性
- Secondary outcome:
- 症状持続時間
- 上記について12.20〜2022.1.17の感染者(オミクロン株有病率70%以上)と2021.6.1〜2021.11.27の感染者(デルタ株有病率70%以上)を比較した。
<結果のまとめ>
<考察・Limitation>
- オミクロン感染とデルタ感染は個々を検査したわけではなく、流行率に基づいて割り当てられているため、自己報告データを使用することは情報バイアスが発生していた可能性がある
- ワクチン未接種者のデータはなし
- 参加者は自己選択してアプリを使用しているため完全に一般人口を代表しているわけではない
論文自体の内容は以上です。オミクロン株の流行もデルタ株の流行も経験している医療者からすると、この論文の結果は感覚的に一致していると感じる人は多いのではないでしょうか。論文に記載されているもの以外にもlimitationとしては複数回感染した人の扱いについては記載がなかったことなどが挙げられます。
実臨床においてデルタとオミクロンを比較してもあまり意味がないかもしれませんが、オミクロンそのものの症状の分布が記載されていましたので、その中から頻度が高い症状をまとめてみました。
無症状者がいることには注意が必要ですが、いつかこれらの症状だけに絞ってCOVID-19疑いの対応ができるようになるといいですね。