2022.9.8 勉強会「救急×膠原病②」
- 2022.09.09
- 勉強会
2022.9.8
救急×膠原病②
今回は2022年5月に行った「救急×膠原病」の第二弾です。
今回も前回に勝るとも劣らない濃い内容でした。
今回は救急外来を受診した膠原病を疑う患者の対応について(関節痛・関節炎を中心に)です。ここでは内容を一部抜粋して紹介したいと思います。
<関節痛を見た時の注意点>
■関節痛≠関節内の問題。まずは明らかな関節外病変を除外する
■関節痛≠関節炎。
- 関節炎の大原則①炎症所見がある②どの方向に動かしても痛い(一定方向へ動かすと痛い→靭帯)③自動>他動→筋肉、腱
■発症形式(急性、慢性)、分布(単関節、少関節、多関節)、局所病態(関節内か外か、外傷などのイベントはなかったか、こわばり)の3つの柱にそって問診や身体診察を行なっていく。
■上記「局所病態」の評価では内科医でも筋骨格系の診察も求められる。
例)前方引き出し、後方引き出し、Lachman、外反ストレス、内反ストレス、腸脛靭帯圧痛、McMurey、Apleyなど
■発症形式と分布から4つのカテゴリーに分けて鑑別をあげる。ざっくりいうと
- 急性単関節炎(感染、外傷、結晶)
- 急性多関節炎(感染、慢性多発性関節炎初期)
- 慢性単関節炎(変形性関節症、それ以外はちょっと変なやつ)
- 慢性多関節炎(膠原病、結晶)
■急性単関節炎の検査は穿刺培養(感染)、画像(外傷)、穿刺鏡検(結晶)
■化膿性関節炎の注意点:発熱を認める患者は半分以下、穿刺で結晶を認めても化膿性関節炎の合併は否定できない(2%)
<発熱+関節炎を見たときの注意点>
■発熱の後に関節炎きたす疾患(参考文献NEJM 1994 17;330:769-74)
- ライム性関節炎
- ライム病
- 反応性関節炎
- 成人発症スティル病
- 感染性心内膜炎
(+二次性化膿性、ANCA、ベーチェット←エキスパートオピニオン)
※発熱+関節炎+RA因子陽性で悪性関節リウマチが鑑別に挙がるが悪性RAは基本的に関節炎→発熱
■成人Still病を疑う場合の注意点
★致死的な病変があった場合はすぐに専門家にコンサルトし入院管理
- DIC
- 血球貪食
- 劇症肝炎
- 心タンポナーデ
★発熱+αのMimicsを除外する
- 感染症(パルボ、デング熱、伝単、肝炎、風疹、麻疹、パレコ、ボルンホルム)
- 悪性腫瘍(特に悪性リンパ腫)
- 膠原病(特に結節性多発動脈炎、悪性関節RA)
■発熱+関節炎+RA因子陽性でまず考えるべき疾患は膠原病でなくIEである。
<その他、関節痛で注意すべきこと>
■リウマチ性多発筋痛症をみたら、とにかく巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)がないかに注意。⽬の症状や所⾒の有無が最も⼤切。
■⾼齢者の関節炎をみたら、ANCA関連⾎管炎がないか注意。腎機能、肺胞出⾎、多発単神経炎。
■中年の関節炎をみたら、抗核抗体関連疾患に注意(SLE、SS、DM、SSc、MCTD)。⽪膚、⼝、⼿、肺をみることが⼤切。
■関節炎は感染だけ対応できれば、注意すべきは関節以外の症状である。
■血管炎は見逃しがちなので注意が必要。
- 発熱+関節痛があり所見がはっきりしない場合は若年→高安病、中年→結節性多発動脈炎、高齢→巨細胞性動脈炎を疑う。
内容は以上です。
成人Still病での致死的な病変に関しては救急医としても知っているべき情報で勉強になりました。やはり専門家から専門領域についての話を聞けるのは非常に貴重ですね。